『〈転がるもの と 落ちるもの〉』

◆〈転がるもの と 落ちるもの〉のねらいと解説 より◆

 〈大道仮説実験〉は1時間くらいでできます。

 仮説実験授業のように授業書を1枚1枚配布せずに,「フリップBOOK」をめくりながらすすめていきます。当然,仮説実験授業のような本格的な科学入門教育にはなりません。科学の原理原則を理解し,自分のものとするところまではいきません。

 でも,予想をたて実験するという科学という〈ものの考え方〉のおもしろさは体験できます。

 〈大道仮説実験〉講座は,学校での授業ではなく,子どもから大人まで一緒に集まるような1時間半くらいのイベントで実施するのがピッタリです。

 ところが,困ったことが起こってきました。

 それは,〈大道仮説実験〉の開発から8年ほどがたち,〈大道仮説実験〉が少しずつ普及してくると,仮説実験授業より先に〈大道仮説実験〉を体験する教師や大学生なども出現するようになったことです。そういう人たちが,学校で授業をする時に,仮説実験授業ではなく,〈大道仮説実験〉を選んでしまうのは,じつにもったいないことでしょう。

 もちろん,学校行事のお祭りや参観日などの非日常の場合には,学校でも,〈大道仮説実験〉はとてもピッタリです。しかし,日々の授業の中で,じっくりと本格的な科学教育ができる条件があるならば,仮説実験授業を,ぜひ,やって欲しいと思います。

 〈大道仮説実験〉を開発した側としては,その源流である仮説実験授業の普及を邪魔するようなことになってはいけないという大きな責任があると思っています。

 それにはどうしたらいいでしょうか。

 今回まとめた〈転がるもの と 落ちるもの〉は,その解決策の1つになるのではないかと予想しています。〈転がるもの と 落ちるもの〉をやっていただければ,大道仮説実験〈ころりん〉との違いは鮮明になります。

 授業書を1枚1枚配って,教室でじっくりとみんなの予想を出し合い,その理由を述べ討論ができる〈転がるもの と 落ちるもの〉は,本格的な科学入門教育につながっていくでしょう。

 一方,大道仮説実験〈ころりん〉はそこまではいきません。科学入門教育の入門(そのまた入門?)くらいでしかありません。だから,たとえ大道仮説実験〈ころりん〉から出会ったとしても〈転がるもの と 落ちるもの〉があれば,仮説実験授業への入門にもつながっていくチャンスが増えるのではないかと考えています。

 ぜひ〈大道仮説実験〉と仮説実験授業の違いを感じていただきたいと思います。逆に,学校で本格的な科学入門教育ができているならば,その息抜き?に,学校の授業でも,〈大道仮説実験〉をたのしむこともいいでしょう。

 仮説実験授業と〈大道仮説実験〉とは,目的も使い道も違います。競争相手ではありません。すみわけが可能なのです。


−−−−−−−−−−

書名:楽知ん・授業書案シリーズ2『〈転がるもの と 落ちるもの〉』
著者:宮地祐司  イラスト:小出雅之
サイズ:A5判 66ページ
販売価格 1,650円(税150円)
購入数


Top