『楽知ん絵本2 びりりん』

●知的エンターテインメントとしての科学教育

 この絵本で紹介した静電気実験は,1700年代中ごろからヨーロッパ各地やまだ植民地だったアメリカで大流行したものです。当時,こういった科学実験(その当時は「ナチュラル・フィロソフィー」と呼ばれていた)は,学校の授業として行われていたわけではありません。コーヒーハウス(現在の喫茶店のようなもの)や会議室,自宅あるいはこの絵本のように道端(みちばた)でおこなわれたこともありました。こんな実験講座に,貴族をはじめ多くの人々が参加費を払ってまでたのしんで参加していたのです。

 実験講師の中には,その参加費で食べている人も少なくありませんでした。町から町へと実験器具とともに渡り歩いて,いろんな科学実験講座をやっていた巡回講師という人たちもいました。科学実験講座は,まさに知的〈エンターテインメント=たのしみごと〉だったのです。そして,それが科学教育のはじまりでもありました。けっして,学校の授業として科学教育がはじまったのではありません。

 その後,1800年代になり科学は急速に実用的に役立つものとなり,1900年代になると産業技術と結びつき,技術革新もどんどん進み,もう普通の人にとって科学は〈専門家だけにしかわからない,とても素人には理解できない難しいもの〉となってしまった感じがします。1800年代後半になってはじめて,学校の授業として科学を教えるようになりましたが,特に日本では,「科学はもともとは知的エンターテインメントだった」なんていう面影は,全く感じられないような教え方が定着してしまったようです。

 この絵本は,もともとは知的エンターテインメントであった〈たのしい科学の伝統〉を,現代に復活させる試みとして,〈1700年代の科学実験講座の中で一番人気のテーマ〉の1つであった静電気実験をとりあげてみました.


●あなたも静電気巡回実験講師に!

 私は,ゆくゆくは「全国各地に,この絵本の中の実験をやってくれる巡回実験講師が少しずつ出現してくるだろう」と思っています。週末にいろんなところに呼ばれて,たのしい科学の伝統を現在に伝えるのは,とってもたのしい仕事です。その時は,お近くの講師を呼んで,ぜひ,多くの人を誘いあって,みんなで「びりりん」してみて下さい。

 あなたも,そんな巡回実験講師になりませんか?

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書名:『楽知ん絵本 びりりん』
文:宮地祐司 
絵:小出雅之
発行:2001/3/○○(○○部)
B5版 110ページ
定価 1,320円(税120円)
販売価格 1,320円(税120円)
SOLD OUT

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